「おい、刹那ってば!」
スタスタと廊下を歩く刹那に向かって手を伸ばせば、届いたところで邪険に振り払われる。
「何怒ってるんだよ」
それでもめげずに再び手を伸ばし、今度は振り払われる前にその腕を取った。
「おい!」
ぐ、と力を込めれば、刹那の身体がこちらを向き。
しかし顔は俯いたままで、こちらを見ようともしない。
「何だよ、どうしたってんだよ」
覗き込むが、ふいと視線を逸らされる。
「刹那、なぁってば」
「うるさい」
短く言われて、ロックオンの眉尻が上がる。
「何怒ってるわけ?刹那君」
「・・・・・・・・・・」
黙ってしまった刹那を見ながら、ロックオンは自分の言動を反芻する。
一体、何が刹那を怒らせたのか。
「あ〜・・・っと、もしかして、あれ?お隣さんの家にいたこと・・・とか?」
それしか思い当たらないので、とりあえずとそう聞けば。
俯いたままだった顔が一瞬上がり。
しかし、ロックオンと目が合うなり、すぐにまた顔を逸らされてしまう。
――やっぱり。
刹那は他人との接触を、極端に嫌っている。
恐らく、沙慈・クロスロードとも距離を取っているに違いなく。
いくら誘われたからといって、隣の家に上がりこんだという事実は、刹那の感情を少なからず逆撫でしたに違いない。
「ごめん、すぐ帰ってくると思ったからさ」
「・・・・・・・・・・・・別に」
掴まれていた腕を強引に振り払うと、リビングへと入っていってしまう。
「刹那、悪かったって」
「もう・・・・・・・・いい」
不機嫌な声のまま、刹那の声が響く。
ロックオンは小さく嘆息すると、刹那の後を追う。
扉を開けてリビングに入れば、そこには殺風景な空間が広がっていた。
隣の家と同じ間取りであることを考えれば、いっそおかしな程に何もない。
広々とした床に置いてあるのは、ただベッドだけで。
とても人が生活している部屋とは思えなかった。
何度かここを訪れているロックオンにさえ、隣の家を見た後ではその空間が恐ろしく虚ろなものに見える。
そこは、まるで刹那の心を投影している箱庭のようだった。
ロックオンは、一人部屋に立ち尽くす刹那の背中に呼びかける。
「俺が他のヤツと話してるのが気に食わない?」
その言葉に、刹那の顔が振り返り。
驚いたようなその表情は、今の言葉が真実だと告げている。
ロックオンは小さく笑った。
「俺が見てるのはお前だけだぞ?」
どこまでも、その背中は小さくて。
寄る辺のない、ただの子供にしか見えない。
手を差し延べて縋らせてやりたい、とロックオンは素直に思う。
ただひたすらに、その子供を愛してやりたいと。
「俺にはお前だけ」
そっと囁いて、刹那の腕を引けば。
小さな身体は抵抗なく、ロックオンの腕の中に納まった。
「好きだ、刹那」
心からの言葉を囁けば、ようやく刹那が顔を上げる。
不機嫌そうな顔は相変わらずだが、そこに少しだけ。
ほんの少しだけ甘えの色を見つけて。
「許してくれる?」
そう聞けば、刹那がコクリと頷く。
「良かった」
そっと刹那の頬を撫でれば、長い睫が伏せられて。
その動作につられるように、ロックオンの顔が刹那に寄せられる。
ちゅ、と唇を啄ばめば、刹那の瞳がまた開いて。
じっとロックオンを見上げた。
愛しくて仕方ない。
そんな気持ちを込めてロックオンは刹那を抱き締める。
「刹那、大好きだ」
目を閉じて、その温もりを感じれば。
やがてロックオンの背中に、刹那の腕が回される。
「俺も・・・・・・・・・」
その一言だけでロックオンの顔には満面の笑みが浮かぶ。
ぎゅうと抱き締めて、思う存分その温もりを感じた。
キスを落として、頬を寄せて。
いつかこの部屋から連れ出してやろう、とロックオンは思う。
何もない空虚なこの空間から、温かい日差しが溢れる故郷へと。
全てが終わったその時に。
必ず。
「抱いていい?」
短く聞けば、躊躇いもなく刹那の首が縦に振れる。
ロックオンは、背中を走らせていた手で、刹那の衣服を脱がせていった。
全てを取り去りベッドへと押し倒すと、素早く自分の服を脱ぎ捨てる。
陽光が差す中で、互いの身体が余すところなく晒された。
「刹那」
小さく囁くと、ロックオンは刹那の唇にキスと落とす。
最初は浅く。
ただ表面だけを辿るように。
やがて、刹那が待ちきれずに唇を開くタイミングを見計らって、その口付けを深くしていく。
溢れる唾液もそのままに、ただ深く。
くちゅり、と艶かしい音を立てて舌が絡み付けば、刹那の喉奥から堪えるような声が漏れた。
少しだけ唇を離すと、そこからは甘い吐息が零れ落ちて。
「・・・ぁ、・・・・・・ロック・・・・・・」
「可愛いな、刹那」
愛おしい。
心の底から溢れる想いに、ロックオンは眩暈を感じる。
慈しむ相手がいるということは、とてもとても幸せな事なのだと、そう感じて笑みが浮かぶ。
「刹那」
目の前にある柔らかな肌に吸い付き、舐め上げる。
いつもよりずっと性急に、その身体を求めた。
「・・・ん、・・・んぁ・・・ぁあ・・・・・・っ!」
唇を寄せられる度、刹那の身体がピクリと跳ねる。
予想外の場所に舌を這わされて、堪らないというように仰け反った。
「ここがイイのか?」
ちゅうと胸の尖りを吸われて、囁かれる言葉。
刹那の欲情を煽り立てるように、ロックオンは卑猥な言葉を投げかける。
「こんなに起たせて・・・好きだなぁ、刹那は」
きゅっと吸われる。
そのまま乳首を甘噛みされれば、刹那の中心は固く張り詰めていった。
「刹那、零しすぎ」
ちゅく、と欲望の先端をその長い指で擦られて、刹那は息を詰める。
「ん・・・ひ、・・・ぁ・・・・・・ぁあっ・・・・・・っ!!」
ぎちゅ、くちゅと音を立てながら上下に扱かれれば、あっと言う間に堪え切れない射精感が刹那の身体を包み。
「ほら、イッちまえ」
耳元で囁かれながら擦る手が早まれば、刹那の身体は細かく痙攣しながら、白濁した液体を撒き散らした。
「あ・・・イ・・・いや、・・・・・・ぁああっっ!!」
ぴゅく・・・と最後の一滴が出るまで、ロックオンの手は執拗に刹那自身を嬲る。
「あふ・・・ぁ・・・あ、ん・・・・・・・」
はぁはぁと肩で息をする刹那を、ロックオンがうつ伏せにさせる。
刹那が困惑した表情を向けるのに、笑顔で応えてやって。
「?!」
その感触と冷たさに、刹那は身体を強張らせる。
「冷たい?ごめんな、でも今日は待ってやれねぇから」
いつもなら時間をかけて解していく作業は、今日はできそうにない。
あまり好みではなかったが、持っていたクリームを刹那の窄まりにたっぷりと塗りつけた。
「ひぁ・・・っ、ン・・・いや・・・ぁ」
じゅぷ、とすぐに指が入れられる。
それは最初から3本もあって。
「あ・・・ぁ・・・、ロック・・・きつ・・・い、・・・ぁ・・・ん」
腰骨を片手で押さえつけながら、指を揃えて奥まで突き上げてやれば、刹那の喉奥からは悲鳴のような声が上がった。
「そうは言っても、こっちは美味そうに飲み込んでるぜ?」
「あ・・・ひ・・・ぅ、・・・ああっ!・・・あ・・・っ!!」
角度を変えて突かれると、絶え間ない快感が身体中を支配する。
もっと、もっと欲しいと自然に腰が揺れた。
艶かしい痴態に、ロックオンの身体にも強烈な欲情が渦巻いていく。
「堪んねぇな・・・もう入れるぞ、刹那」
耐え切れないとばかりに、ロックオンが猛った自身を後孔に宛がった。
そのまま息をする暇さえ与えずに、腰に力を入れれば。
「ひ・・・ひぁ・・・・・・・・・あ、あ、あ、・・・・ああ・・・・・・」
じゅぶじゅぶと音を立てて、熱い塊が刹那の中に埋め込まれていく。
自身を侵す圧倒的な大きさに、刹那は喘ぎ、咽び泣いた。
「あ・・・う・・・ロッ・・・ク、・・・ひ・・・ん・・・・・・」
これが最後だとばかりに、残った部分を力強く押し入れれば、刹那の身体は弓のように仰け反る。
「刹那」
眉間にしわを寄せ、ロックオンが低く囁く。
「行くぜ」
宣言した途端、ぐいとその場所を突き上げた。
「ひぃっ!!・・・いや・・・!いやぁ・・・・っっ!!!」
手加減なしで擦り上げられて、すぐに刹那の唇からは耐え切れないとばかりに声が上がる。
それでも、ロックオンの突き上げが弱まることはなかった。
「ひっ、ひっ、あっ、あっ・・・あああっ・・・!!!」
奥の奥まで侵された後に、入り口ギリギリまで引き抜かれれば、その摩擦に眩暈がする。
時折浅く挿入されて、前立腺を攻められれば、刹那の屹立からは絶え間なく白い液体が溢れ出した。
「刹那、く・・・刹那!!」
強烈な締め付けに頬を歪ませながら、ロックオンは腰を打ち付ける。
ぐい、ぐいと自分のリズムで突き、ひたすら強くその場を侵した。
「ひぁあ!・・・イく・・・っ!ロック!・・・っ、イくぅ・・・っ!!」
溢れた唾液が顎を伝うのも構わずに、刹那が極まったように高い声を上げる。
「俺もだっ・・・くっ・・・う・・・・・・・!」
「ああ・・・っ!イッ・・・、イく・・・ああ、ああっ!!」
声に誘われるように最奥で二度三度と穿てば、やがてロックオンの欲望が弾けて。
刹那自身からも、絶え間なく白濁が迸る。
「あ・・・、あぁ・・・ああ・・・・・・・」
ガクリと肩を付き、忙しなく背中を上下させる刹那の首筋に、ロックオンはそっと口付けた。
「感じた?」
そう聞けば。
コクリと素直に頷く。
そんな刹那がひたすら愛しくて、ロックオンは笑みを浮かべる。
「俺も」
言いながら、自身を引き抜けば、刹那の眉が切なげに寄せられる。
「可愛い顔」
ちゅとこめかみにキスして、刹那を抱き締めれば、小さな身体はロックオンの腕の中に大人しく収まった。
「好きだぞ、刹那」
もう一度と囁く。
自分の想いに疑問を持たなくなるまで、何度でも言ってやるつもりだった。
「好きだ、本当に」
首元を擽るように鼻先で辿られて、刹那は身を捩った。
「俺も。ロックオンが好きだ」
ぶっきらぼうな言葉。
しかし、そこにあるのは本心からの想いだとロックオンは知っている。
「ずっと好きだから」
言われて、ロックオンは腕の中の存在を強く抱き締めた。
【あとがき】
2007年12月8日〜12月11日
ロク刹です。
ロク←沙慈から、一応続いています。
1頁目で終わろうと思ったんですけど、何気にこの二人のエロって書いたことないんだなぁと気付き。
おまけみたいな感じでH部分を足しました。
エロ少なくて申し訳ない・・・orz
次はもっと言葉攻めする兄貴を・・・!