「貴方、そんな事まで上手いんですね」
フライパンを器用に操るロックオンを見ながら、ティエリアが呟く。
「まぁな。こういうの、結構好きなんだよ」
ニコリと笑うと、ソースと絡めたパスタを皿に盛り付ける。
最後にちぎったパセリを乗せると、魚介類とトマトソースの馥郁たる香りが辺りに広がった。
「料理までできるなんて」
湯気の立つ皿を見つめながら、ティエリアが小さく言う。
「ん?何だ、尊敬したか」
「いえ、嫌味だなあと」
ティエリアの言葉に、ロックオンは目に見えて肩を落とす。
「お前ねぇ、素直に褒めてよ、こういう時は」
「だから、何でもできて嫌味だって、これって褒めてるのと同義語でしょう。良く考えてみてください」
「・・・・・・普通に褒めて欲しい」
上目遣いにティエリアを見る。
「料理のできる男の人ってカッコイイとか、ロックオン見直した、とかさ」
出来上がったばかりのスパゲティを机まで運びながら、恨めしそうに言えば。
「料理のできる男の人ってカッコイイ、ロックオン見直した・・・これでいいですか」
平坦な物言いに、益々ロックオンの肩が下がる。
「も・・・いいです」
涙声になるのも仕方ない。
食べたければどこかで調達、という概念があるティエリアにしてみれば、きっといちいち手間をかけて料理を作ることなど、時間の無駄にしか思えないのだろう。
手間を惜しんだせいで美味しいものを食べられない事の方が、よっぽど損だとロックオンは思うのだが。
「とりあえず、食おうぜ」
そう言って、スパゲティに手を伸ばす。
ティエリアも言われるまま、フォークを自分の皿へと差し入れた。
「・・・・・・・・・・・・思ったより美味しいですね」
口に入れたスパゲティを飲み込むと、ティエリアがポツリと呟く。
「なんだ、その意外だ!的な感想は」
「まぁ、貴方は何でもそつなくこなしそうですから、別に意外というわけでもないですけど」
「ティエリア・・・お前ってヤツは・・・・・・それが恋人に対する言葉かねぇ」
あまりにもあまりなティエリアの言葉に、はぁ、とこれ見よがしにため息をついて見せる。
「誰が恋人ですか。貴方とそういう関係になった覚えはありませんよ」
「お、言うねぇ。昨日の晩、もっともっとって縋り付いてきたのは誰だっけな?」
「記憶違いじゃないですか?最年長者はこれだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉でティエリアに勝とうなどと思う方が無謀なのだろうか。
完全に、負けている。
「ティティ〜・・・もっと優しくしてよ、お兄ちゃんイジけるよ?」
情けない声を上げるロックオンを、ティエリアはちらりと見て。
手にしていたフォークをカタリ、と机に置いた。
そのまま椅子を立って、ロックオンの目の前まで歩み寄ると。
「ロック」
眼鏡を外し、常に不機嫌な表情を貼り付けている顔に、小さく微笑みを浮かべる。
そのまま手を伸ばして、く・・・とロックオンの顎を持ち上げれば。
「とっても・・・美味しいですよ、ロックオン。料理までできて・・・貴方は本当に素敵な人だ」
言うなり、ちゅ・・・とその唇に己の唇を重ね合わせた。
普段見慣れない笑顔に呆然としていたロックオンは、唇に当たる柔らかい感触に慌てたように身体を揺らし。
「・・・ちょ・・・え・・・?!」
しどもどと言葉を紡ぐロックオンの姿に、ティエリアは噴き出す。
「これで満足ですか、ロックオン・ストラトス?」
さもおかしいというように、目を細めた。
「・・・お前なぁ・・・・・・」
からかわれたと知って、ロックオンは大きく息を吐いた。
滅多に見れない笑顔が見れたかと思えばこれか、と心の中で項垂れる。
しかし、やがて顔を上げれば、その目に不穏な光が差し始め。
にやり、とその相貌に笑みを浮かべる。
「満足なわけないだろう、ティエリア・アーデ」
ティエリアの腰を強く引き込むと、華奢な身体はぐらりと倒れて。
それをしっかりと腕の中に抱き込む。
そして。
「もっと寄越せ」
低く囁くと。
激しくティエリアへと口付けた。
相手が唇を緩める前に、強引に合間を割り、口内へと舌を伸ばす。
一直線に進むと、ティエリアの舌を絡め取って。
「ん・・・ぅ・・・!」
喉から漏れ出る声さえも封じるように、深く、深く貪った。
口内をかき回し、散々奥まで侵してから強く吸い上げて。
やがてティエリアの身体から力が抜けたことを確認してから、ようやく唇を離してやる。
「う〜ん、満足」
ニッコリと、ロックオンが笑って言えば。
「・・・・・・・・・・・・・・馬鹿」
「負けっぱなしは性に合わないんでね」
パチリ、と一つウインクをすると、腕の中で力なく横たわるティエリアに、もう一度と唇を寄せた。
ちゅ、ちゅと何度も啄ばめば、今度はティエリアの腕もロックオンに伸ばされる。
それを合図に、口付けは急激に深いものになっていく。
ちゅく・・・と濡れた音と共に、ロックオンの舌がティエリアの口内を探る。
絡めて、離れる。
擽るように頬の内側に舌を這わせ、また絡みつく。
飽くことなく貪れば。
「料理、冷めますよ」
少しだけ唇を離したティエリアがそう囁く。
「ティエリアを食うからいいよ」
「僕は料理が食べたいんですけど」
「俺にしとけ」
問答無用とばかりに、ティエリアの衿を開く。
白く、滑らかな肌が晒されれば、そこに昨夜の名残の朱を見つけて。
「ティエリア」
言うなり、噛み付くようにその場所に口付けた。
唇で吸い上げ、舌で辿る。
舐め上げて、また吸い付けば。
「・・・ん・・・ぁ・・・あ・・・・・・・!」
ティエリアの掠れた声が部屋に響き。
堪らないというように、ロックオンの頭を掻き抱く。
「ロック・・・ぁ・・・・・・・・・」
開いた部分を鼻先で辿られると、擽ったさに身を捩る。
舌で嬲れば、ひくりと身体が揺れて。
「堪んねぇ」
ロックオンは性急な動作でティエリアの服を脱がしにかかる。
時折唇を寄せては、新たな朱を刻み込み。
「ホント美味そう」
そう呟いて。
やがて本当に、全てを食らい尽くせとばかりに、ティエリアの身体へと沈み込んでいった。
【あとがき】
2007年12月6日
甘すぎて困ったお二人をテーマに書いてみました・・・!(え?)
いや、でも本編でのティエリアを見る限り、「微笑みを浮かべる」なんて事は絶対にしてくれなさそうですよね。
ツンデレのデレの部分が全くないお方。
むしろ、それは既にただのSだろうってくらいの><
とりあえず、料理するニールが書けて楽しかったです^^
何でもできる男、ニール!
料理も掃除も洗濯も、あらゆる家事を完璧にこなしそうです。
すっかりソレスタルビーイングのお母さんだね!(脳内妄想)
ロクティエはちょっと書き難いCPですが、大好きなのでまた書きたいです。
捏造万歳・・・!
【あとがきのあとがき】
自分がロクティエメインで書くようになるだなんて、これっぽっちも思ってなかった頃の作品でございますΣ( ̄□ ̄;)
最初の頃のティエリアは、本当につんつんでしたね。
あんなにデレるなんて、誰が想像したでしょう・・・。
今現在、二期の二話が終わったところです(2008年10月)。
ロックオンがライルになったことで、ティエリアがどう変わっていくのか・・・怖い&楽しみです!