「・・・・・・と言う訳でさぁ、全く、あいつの行動はいつも読みきれないよなぁ」

「キレナイ、キレナイ!」

話している相手は人間ではないが、そんなことはロックオンには関係ない。

「ま〜ったく、あそこまで突飛もない行動されると、俺も対処に困るよ」

仏頂面をしたマイスターの一人を思い浮かべながら、なぁ?と黄色い球体に同意を求める。

「コマル、コマル!!」

ベッドで寝転がる男の側で、黄色い物体・・・ハロは体を揺らしながら答えた。

「あ〜・・・たまには女でも抱きにいくかなぁ・・・」

それに対する答えは返ってこない。
聞こえなかったのか、返答に困ったのか。

ピコピコと動くハロを横目に見ながら、ロックオンはため息をつく。
作戦中以外の、こうした待機時間は暇すぎて苦痛でさえある。

と、来客を告げるベルが部屋に鳴り響く。

――誰だ、こんな時間に。

時間は既に深夜。
真夜中と言っても過言ではない。
勿論、ロックオンにとっては宵の口でしかないが。

「誰だ」

インターフォンに向かって問えば。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・刹那」

「あ???」

一瞬、何と言われたか分からず、おかしな声が出てしまう。
たった今まで愚痴を言っていた、その張本人が現れたという事に驚きを隠せない。

「いや、待て待て。何で刹那?」

ブツブツと呟きながら再びカメラを確かめる。
しかし、そこにはやはり見慣れた仏頂面が立っていて。

ロックオンは慌てて玄関へと向かう。
扉を開ければ、確かにそこには刹那がいた。

「何だ、おい、こんな夜更けに」

刹那は何も言わず、持っていた荷物をずいと前に差し出す。

「ん?何だこりゃ」

ホットドッグチェーン店の紙袋。
中を見れば・・・。

「ああ、なんだ。これか」

引っ張り出せば、丁寧に畳まれた自分のベストが出てくる。
前回の作戦中、くしゃみをしていた刹那にかけてやったものだ。

「いや、別にわざわざ持ってこなくても良かったのに」

刹那は首を振る。

「ないと・・・・・・困ると思って」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

自分はそんなに着たきりスズメに見えるのだろうか。
確かにいつも同じような服装ではあるが。

しかし、洗濯してアイロンをかけたと思しき服を、わざわざこうして持ってきてくれたことは嬉しい。

「ま、いいや。ありがとな。良かったら中入れよ。お茶くらい淹れるから」

扉を大きく開ければ、一瞬躊躇したものの、素直に中に入ってくる。
靴を脱ぐときちんとそれを揃え、視線を上げないまま付いて来て。

――どうも読めねぇ・・・・・・。

刹那という存在は、いつでもロックオンを困惑させる。
それは、その無表情のせいか、滅多に開かない口のせいか、それとも突飛もない行動のせいか。

「適当に座れよ。何がいい?コーヒー?紅茶?酒もあるぞ」

一応笑顔を浮かべて尋ねれば、相変わらず足元を見たままの刹那がぽつりと呟く。

「ん?悪い、聞こえなかった」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・酒はダメだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

何と応えたらいいのか分からず、思わず黙り込む。

「・・・・・・いや、そうだな、酒はイカン。刹那は未成年だもんな。そうだな。うん。じゃあミルクにしておこう、そうしておこう」

返事は聞かず、ロックオンは牛乳を入れてやる。
それを刹那の前に置けば、ありがとう、と。

「いや、まぁ、何だ。ゆっくりしていけよ」

刹那の前のソファに腰をかけると、ロックオンはその様子をじっと見る。
視線の先では、刹那が無表情のまま牛乳をごくごくと飲んでいて。

「美味いか?」

聞けば、こくりと頷く。

――無表情で分かりにくいけど・・・素直でいい奴ではあるよな。

評価に困るものの、とりあえずそう結論付けておく。
少なくとも、アレルヤやティエリアより可愛げがあるのは確かだ。

「おかわりいるか?」

飲み干したらしい刹那に聞けば、再びこくんと頷く。
ロックオンは同じカップに牛乳を入れてやって。

「もう一杯?」

こくん。
ごくごく。

「・・・もっと飲むか?」

こくん。
ごくごく。

「・・・・・・入れるか?」

こくん。
ごくごく。

「・・・・・・・・・あと一杯?」

こくん。
ごくごく。

「・・・・・・・・・もうやめとくか」

こくん。

足元を見つめたままの刹那に、苦笑いが起きる。

――そっか。何か分かってきたかも。

ロックオンは立ち上がると、刹那の隣に座る。

刹那の身体は微動だにしない。
まるで周りが見えていないかのようだ。

「刹那」

苦笑しつつ名前を呼ぶと、そっとその肩を抱いてやった。
それまで無表情だったその横顔に、少しだけ驚きの色が浮かぶ。

「お前は、力入りすぎ」

ぎゅうと抱き寄せて、頭を撫でてやれば。
強張っていた刹那の身体から力が抜けていく。

「よしよし」

続いて肩、背中と撫でてやる。

「今日は兄ちゃん家泊まってけ、な!」

ポンポンと肩を叩けば。

こくん。

頷く刹那に、ロックオンは笑った。





【あとがき】

2007年11月10日

やっちゃった・・・。
一応ロックオン×刹那ということになるでしょうか。

ガンダムにはハマッたことのない飴屋。
でも、刹那の海へダイビ〜ング!を見たら、どうしても書きたくなっちゃいまして^^;
ほんと、びちょびちょのままパイロットスーツ着てたら可愛いなぁ、刹那。

ガンダム00ではロックオンが好きです。
ハロとデュナメスも♪

この話は、4話まで見た時点で書いています。
兄貴なロックオンと、不思議ちゃんオーラ全開の刹那。
いい組合せだ・・・。