「前から聞きたかったんだけどさ、それって伊達?」

もうずっと以前から気になっていた疑問を口にする。
その言葉に、ティエリアはさも面倒くさそうに眉を顰めた。

「別に、どっちだっていいでしょう」

作り物のように美しい唇からは冷たい声が響く。

「気になるんだよ」

「どうしてですか」

「どうしてって……」

思わず語尾を濁らせると、ふぅ、と一つため息を落として、裸の肩を晒したままのティエリアが振り返る。
ルビーのような紅い瞳が、じっとこちらに向けられて、ロックオンは身じろぎした。
そうやって凝視されると、何もかもを見透かされるようで落ち着かない。

「どうぞ」

顎でベッドサイドの机を指されて、そちらを見る。
抱き合って、もつれるようにベッドに入った際に、自分が彼から抜き取った眼鏡だ。

「かけてみれば分かるでしょう?」

つんと顔を背けてしまったティエリアに、ロックオンは慌てて手を伸ばす。

「悪ぃ、つまんねぇこと聞いた」

何となく、それが伊達だということは確信があった。
何故ティエリアがそれをかけているのかも、おぼろげながら理解できる。
そして、それを追求されるのを彼が嫌っているのも知っていたのだけれど。

完全に機嫌を損ねてしまったらしく、ティエリアはシーツを身体に巻きつけて背を向けてしまう。

「悪かったよ。なぁ……機嫌直して」

情けない声を出しながら、晒されたままの首筋に指先を這わせる。
光の加減で紫紺に見える黒髪を指に絡め、白いうなじに小さくキスを落とした。
ぴくん、と身体が反応をしたことをいいことに、その手をそっと背中に下ろしていく。

「ティティに嫌われたら、俺どうしていいのか分かんねぇよ」

小さく耳元で囁くと、ティエリアがやれやれといった様子で息をついた。

「昨日散々したのに」

呆れ声に、ロックオンは笑みを浮かべる。

「俺は何度でもしたいの。お前が好きだからさ」

唇で背筋を辿り、時折軽く吸い付けば、白磁のような肌にはすぐに鬱血の痕が残った。
尾骶骨まで舌先を下ろすと、すべすべとした肌触りの尻をそっと掴む。

「入れたい」

心のままの欲求を口にすると、いよいよ欲望に火が付いた。
後ろからのしかかって、シーツの上にティエリアをうつ伏せさせる。
掴んだままの尻たぶをぐいと開くと、昨夜幾度も弄られた小さな穴がひくりと痙攣した。

「露骨なんですよ、貴方は」

「だってなぁ、これ……どんだけ扇情的な眺めだか、本人には分からないだろうけど」

紅く色づいた場所が、どれだけの快楽を与えてくれるか知っているだけに、ごくりと喉が鳴ってしまう。
浅ましいと分かっていても、欲しいものは欲しい。

「いい?」

「どうぞ。僕も……貴方が欲しいから」

少しだけ上ずった声が愛おしい。
肩を抱きしめて、耳元に唇を寄せた。

「俺も。お前が欲しいよ。すごく欲しい」

ぎゅうと力を込める。

愛してる。
離さないから。

小さく囁く。
振り向いたティエリアの顎を捉えて、そっと口付けた。




「嘘つき」

目を開けると、そこには何もなかった。
ただの闇だ。
自分がどこを向いているのかも分からない。

「貴方は嘘つきだ」

冷たいベッド。
誰の温もりもない。
聞くに堪えないような甘い言葉を囁く声も。

「ロックオン・ストラトス」

どうして、こんな闇の中に自分は一人でいるのだろう。
何故、冷たいシーツに身体を横たえているのだろう。

「ロックオン……ニール……」

好きだと言ったくせに。
離さないと言って抱いたくせに。

「嘘つき」

もう、いない。





【あとがき】

春コミ用SSとして書き下ろしたものです。
23話後に書きました・・・うう・・・!

今の時点で、兄貴がどうなったのかは分かりません。
しかし、飴屋の妄想ではこのようになっております↓

1、記憶喪失になったニール。
アリーに拾われ、色んな意味で調教されてしまう。
精神的肉体的にアリーに依存しきったニールは、彼の言うままにソレスタルビーイングに敵対してしまう・・・!
(後日、ティエリアあたりと戦って、ぼっこぼこにしてる最中に記憶が戻るとなお結構)

2、ハムに拾われて、ビりーともども可愛がられ、三人で素敵な三角関係を築いている。
(この際のCPはあくまでハム→ロク←ビりーで!)

3、記憶も言葉もなくした兄貴を、ライルあたりが拾って手取り足取りお世話している。
(ライルが精神的にとても大人だとより一層萌え)

・・・はぁ、悲しくなってきた。
いくら妄想しても、悲しみは尽きないですよ・・・(ToT)
二次元キャラクターにこんなに悲しみを覚えるとは思いませんでした。
生きてることを切に願います。