紅く色づいた唇に自分のものを押し付ける。
舌で合間を割り、抵抗する身体を抱き込んで喉の奥まで蹂躙する。
突っぱねようと胸を押す腕を掴んで、一度浅く呼吸した後に再び切り結ぶように口付けた。

どうあがいても、体格的にこちらが有利なことは変わらず、そんな相手に全力て抵抗するには相当の力がいるのだろう。
何度も繰り返すうちに、次第に相手の身体から力が抜けていく。
それでも抵抗をやめようとしない身体に、笑みが浮かんだ。

口付けたまま視線を落せば、紫がかった黒髪が見える。
眉はきつく寄せられていて、こんな風に力づくで押さえ付けられていることが、心底不本意なのだと告げている。

(可愛い奴)

腕をひねったり、身体を捩ったり、とにかく諦めた様子もなく、必死にこちらを振りほどこうとしている様が愛らしくてたまらない。
滅多なことでは動かない頬がほんのりと赤くなっているのも、きつい眼差しが瞼の下にすっかり隠れているのも、たまらなくそそる。

ロックオンはもう一度腰に回した腕に力を込め、深く顔を合わせた。
口蓋を擦りあげ、頬の内側から柔らかな下の裏まで、丹念に舌を這わせていると、喉元からくぐもった声が上がった。

やがて、その声は大きくなり、取っていた腕が忙しなく胸を叩く。
その様子に唇を離すと、途端に相手の呼吸音が辺りに響いた。
まるでたった今、深海から浮上してきたかのような荒い呼吸。

「わり、苦しかった?」

呑気な声に、腕の中の人物が鋭く見上げる。

「なに・・・何を・・・!!」

「何って・・・・・・キス?」

愕然としたようにティエリアは目の前の男を見上げる。
まるで理解できなものを見てしまったかのように、その瞳に嫌悪感を滲ませた。

「貴方のつまらに冗談に付き合っていられるほど、俺は暇じゃない」

ロックオンは小さく肩を竦めると、ティエリアの耳元に口を寄せた。

「お前が好きなんだよ」

こそりと囁かれた言葉に、ティエリアは身を翻そうとする。
しかし、身体全体を抱き込まれた状態ではそれも適わなかった。

「馬鹿なことを・・・!」

「馬鹿って、ひどいな。俺はお前が好きなんだと、真剣に告白してるんだけどな」

あっけらかんとした物言いに、ティエリアは顔を歪めたまま唇を噛む。

「ふざけるな」

「ふざけてなんかないさ。俺は本気だぜ」

「冗談じゃない!いいから、この腕を離せ」

背中に回った腕に爪を立て、何とか身体を回転させて逃れようとするのを、ロックオンは益々力を入れて引き寄せた。

「い・・・」

痛い、と声を上げるのが躊躇われるのか、歯を食いしばったティエリアが剣呑な瞳でロックオンを見上げる。

「離さねぇぞ、言っとくけど」

「やめろ!」

「駄目。絶対に離してやらねぇ」

ぐいと顎を掴み、炎のように赤く燃える瞳を見ながら、ロックオンは再び顔を寄せる。

「くそ、やめろ!」

「しつこい」

諦めろ、と囁き、再び深いキスで相手の呼吸を封じ込めた。

「ん・・・!」

舌を絡めながら強く吸ってやると、引き込んだそれを甘噛みする。
柔らかな感触を十分楽しんだ後は、ティエリアの口内に無理やり押し入って溢れた唾液をすすってやった。

「ん・・・く・・・っ!」

そっと口付けを解き、酸欠の為に潤んだ瞳を覗き込む。

「好きなんだよ、ティエリア。お前が好きだ」

そして耳元でもう一度。

「愛してる」

そっと吹き込まれた言葉に、戦いたようにティエリアの肩が上下する。

「愛してるんだ、ティエリア」

熱い吐息で再び告げれば、ティエリアの身体からかくりと力が抜けた。

「・・・・・・僕は・・・」

何かを堪えるように目を伏せたティエリアの頬に、ロックオンはそっと自分の唇を寄せる。

「愛している、俺はお前が好きだ」

ちゅ、と音を立てて口付けると、腕を離してやった。

拘束が解かれても、ティエリアは動こうとしない。
何が起きたのか分からないというように、呆然と立ちすくんだままだ。

「考えすぎんなよ。どうせ答えなんて決まってんだから」

笑いながらそう告げると、ロックオンはその場を後にした。

「可愛い奴、本当に」


――告白は、先にしたものが勝ち。





【あとがき】

2008年2月27日

まったく更新されてないことに焦り、必死で書いたロクティエです。
中途半端ですいません(;-_-;)

ロクティエだと、告白をした方がイニシアチブを取りそうだなぁと妄想して書いたものです。
ティエ告白バージョンも製作中。

最近ロクティエしか見えません。
あとロク受け(なんだそれ・・・)。
回を追うごとに可愛くなっていくティエリアに、はぁはぁしてます。
くそ!可愛い奴!!