温かな陽の光を感じて、刹那は目を覚ました。
途端、自分がいつもの場所で寝ていないという事実に気付く。
刹那のベッドに、決して陽は当たらない。
部屋の中に光が差し込むこともない。
取り付けた時に閉めたカーテンは、以来開けられたことがないからだ。
くちゃくちゃになったシーツを押しのけると、床に降りる。
辺りを見れば、ソファに自分の服があった。
それはきちんと畳まれていて。
刹那はそれを見ると、自分が脱いだパジャマと見比べる。
ちらちらと何度か視線を行き来させ。
やがて、慎重にパジャマを畳み始めた。
しかし、自分の服がされていたように、きちんとした形にはならない。
どこか不恰好に、あちこち飛び出したり歪んだりしている。
それが気に入らなくて、何度も畳み直すが、やはりどうしても上手くいかない。
きっちりと畳んでいるつもりなのに。
端と端を合わせて、それはもう細部まで拘って折っているつもりなのに。
何度も何度も畳み直していれば。
「刹那、起きたのか?・・・・・・・って何やってんの」
下着姿のまま、ああでもない、こうでもないとパジャマと格闘する刹那にロックオンが声をかける。
「・・・・・・・・・なぜだ。どうして畳めない?」
ブツブツと呟く声を聞くと、ロックオンは目を見開き、次の瞬間には噴き出していた。
「ぶっ・・・いや、刹那、そんなのどうでもいいって。どうせ洗うんだし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
刹那はそれを聞くと、憮然とした表情を隠そうともせず、終に綺麗に畳むことのできなかったパジャマをソファに置く。
そして、何か納得がいかないという様子のまま、やっと当初の目的通り服に袖を通した。
ロックオンは、そんな様子に笑いを堪えきれないのか、小さく肩を震わせている。
刹那はそれを上目で見て。
「・・・・・・・・・・帰る」
「おおっと、待った待った。朝食作ったんだよ。食っていけ、な」
気分を害してしまったようだと気付き、ロックオンは慌てて真面目な顔を作る。
「2人分作っちまったから、刹那が食べてくれないと困るんだよ」
さも困ったというように肩を竦めれば、俯いたまま側を通り抜けようとしていた刹那の視線が上がる。
「・・・・・・困る・・・のか」
ポツリと呟けば。
「ああ、すっげぇ困る」
「・・・分かった」
「食べてってくれるんだ?」
コクリと頷く刹那に、笑みが零れる。
――ホント、こうなってみると分かりやすい奴だな。
昨日まで、その言動に振り回されていたのが嘘のようだった。
懐に入れてよく見れば、刹那の感情は意外と表に出ているのだと気付いて。
――可愛いかも。
ポンポンと刹那を頭を撫でてやりながら、ロックオンはそんな事を思っていた。
【あとがき】
拍手お礼用にUPしていたロックオン×刹那です。
恋愛未満のお二人。
まるで兄弟^^;
刹那は几帳面そうです。