「刹那、大丈夫か」
コックピットを覗き込みながら声をかけたのは、ロックオン。
その声に目を上げる。
「・・・・・・・・・問題ない」
大丈夫だ、と言ったつもりだったのに、ロックオンの眉間は強く寄せられて。
「どこか問題ない、だ」
少し怒ったように刹那の腕を取った。
呆気に取られるようにこちらを見るアレルヤやティエリアの間をすり抜けると、パイロットスーツも脱がないまま隣接したミーティングルームへと連れ込まれる。
「こっち向け」
二人だけになった部屋でぐいと顔を挟まれ、いつものロックオンとは比べ物にならない程のきつい眼差しで覗き込まれれば。
「お前・・・・・・・・・」
どこか悲しげな声音が刹那の耳に入ってくる。
何がそんなに悲しいのか、刹那には分からなかった。
何故、ロックオンがそんなに苦しそうに喋るのかも。
そのまま、ぐいと腕を引かれ。
気付けば、ロックオンの胸に抱き込まれていた。
自分よりずっと背の高いロックオンに抱かれれば、耳元で心臓が鳴っているのがよく聞こえて。
その規則的な鼓動は、昂ぶった神経に緩やかな安息をもたらしてくれる。
刹那はその音に目を閉じた。
「刹那」
彼の低くて、温かい声。
「大丈夫なのか?」
そっと疑問を投げかけられれば。
「ああ」
「本当に?」
「・・・・・・ああ」
ロックオンが薄茶色の瞳を覗き込めば、刹那はその目でじっと見返してくる。
何も映していないように見える。
しかし、刹那をずっと見守ってきたロックオンには分かっていた。
彼の瞳に。
大きな惑いがあることを。
「刹那」
そっと囁けば。
その腕がロックオンの肩に回される。
身長差を埋めるように、爪先立った刹那の顔がゆっくりと近付き。
やがて唇同士が惹き合うように重なる。
どちらからともなく、舌が絡み合い、より密着するように身体に回った腕に力が篭る。
柔らかな舌を巧みに吸い上げ、口内を隅々まで辿り、互いの液体を嚥下すれば。
そっと唇が離れて行く。
「刹那。俺はずっとお前を見ている。・・・ずっとだ」
その言葉に返答はない。
ただ、ロックオンの真摯な瞳をじっと見る、澄んだ瞳がそこにあるだけで。
「だから・・・お前は迷わなくていい」
そのまま、もう一度と顔を寄せた。
この世で一番愛しい、輝石のようなその存在に。
【あとがき】
2007年12月22日
この話を書いたのは、実は結構前なんですが、気に入らずにお蔵入りしていました。
でも、12話を見て思わずUP。
お兄ちゃんはいつも刹那を見守ってるといいと思います・・・!(妄想全開)
兄貴は本当にかっこいいですね(≧ロ≦)